幸せは、きっとすぐ傍



一時間程ゆっくり買い物をして、二時過ぎくらいに穂夏は家に帰るために電車に乗った。まずはケーキを作ることを決め、流れる景色を眺める。


自分の住む町の駅で電車を降りながら、穂夏は荷物を握り直した。


ふ、と嘆息して、穂夏は小説を閉じながら雨の降り続ける外に目を向ける。止むことを知らないらしい今日の雨。


ホワイトクリスマスならぬレイニークリスマスかな、とくだらないことを考えながら冷蔵庫へ入れたチーズケーキを入れる。レアチーズケーキだ。


しっかり固まっていたそれを再度冷蔵庫へ仕舞い込み、穂夏は油を買い忘れたことを唐突に思い出す。時刻は午後五時。近くのスーパーに買い物に行くために外へ出ると、冷たい風が穂夏の身を包んだ。


吐く息が白い。傘に当たってざーざーと音を立てる雨は冷たい。風が白く色付いた息をさらい、どこか遠くへ誘っていく。


歩いて十分程のところにあるスーパーに入ると、外よりかは幾分暖かい。それでも家の暖かさが恋しく、穂夏はすぐに買い物を済ませると帰途へとつく。


────と。


開店前の居酒屋の店先に、本日三回目となる人影を見つけた。隣に彼女はおらず、頬は赤く辛そうな表情。その様子に訝りながら、穂夏は探るように声をかけた。


「……あの?」


瞳を閉じていた男が、そっと瞼を開けて穂夏を見る。その瞳は悲しみを帯びていて、それはまるで────一年前の穂夏のような。そう思った瞬間、答えにはすぐ辿り着いた。


「大丈夫で、……っ!」