幸せは、きっとすぐ傍



一通りザッピングしてやはりいい番組を見つけられず、穂夏は電源を切った。少し考えた末、そういえば未読小説も映画もお菓子を作る材料も無いことに思い至る。


はあ、と一つ溜め息を吐くと、穂夏は着替えて買い物に行くことにした。


隣の市の方がお店が多くいつもなら賑わっているのだが、雨である今日はどうだろうか。カップルと親子連れが多いかもしれないけれど、まあ雨の日に出歩く人は少ないだろう。


電車に乗って隣の市を目指す。車内は比較的空いている。それでもちらほらカップルはいて、穂夏は視界に入れないようにドア近くに立った。


すると、隣に同い年くらいの男性が並ぶ。ちらり、その顔を盗み見れば端から見ても分かる程幸せそうな表情。


彼女と待ち合わせか、と思ってふっと視線を外すと、アナウンスが入って電車が減速を始めた。


まずはどこに行こうか、と改札を出ながら足を進める。適当に本屋で五冊とレンタル店で二本映画を見繕って店を出た。


ふと気付けば時刻は十二時を回っていて、見つけたパスタ専門店に入る。


中は思ったより混んでおらず、穂夏は窓際の席に一人座った。シンプルにベーコンクリームパスタを頼み、届いたそれを食べながら外を見る。外はぽつぽつとカップルが歩いていて、親子連れは見られない。


スマホを見るとさゆりからLINEが入っていた。ごめんね、というそれに楽しんできてね、と返し、穂夏が席を立とうとする────視界の端に、見たことのある人影を捉えた。


あれ、と思う。確か電車で隣にいた男性だ。


そういえばさっき一緒に降りたな、と思い出し、彼の隣に視線を向ける。そこには一人の女性がいて、仲の良さそうな様子に彼女かと気付いてから穂夏は店を出る。


スーパーで普段の食料を買い、他のものを物色する。チーズケーキなら日持ちするだろうしさゆりにでもあげようかと材料をカゴに放り込んだ。暇潰し兼差し入れである。