Pacifism Spy

しかし、一分たっても物音一つしない。
レイは息止めの達人だったのだ。

亀のように何十分も止めてはいられないが、
普通の人間より三倍以上長く止めていられる。

が、霜降はそれを知っているので、
慌てずに待っていた。
そしてついに、

「・・・っごほっ!」

霜降は、レイの咳き込む音を聞いて
そちらへスッと動いた。

しかし、レイの方向とは全く逆から
視線を感じた。

「なんだと?」

視線の方向へサッと振り返ると、
今度は右手から、次の瞬間には左手から、
チラチラと見られている感じだ。

しかし、人の気配は全くしない。
霜降は苛々してきた。

しかし、どうすることもできない。
そのうち、煙が晴れてきてしまった。