Pacifism Spy

更に、冷静に考える能力も、
スパイモードも奪われてしまった。

黙々と働いていると父と娘が帰ってきた。

娘はニーナが一生懸命畳んで積んでおいた
シーツの上に飛び乗り、
ぐしゃぐしゃにした。

継母と父は、怒りもせず、
むしろ可愛いと抱きしめた。

ニーナは叫びたかった。

『何するの!』

と、娘にシーツを投げつけたい。

『畳み直してよ!』

と怒りたい。

継母と父にも、

『怒ってよ!』

と言いたい。

そのとき、ニーナの頭に、
サンナの顔がパッと浮かんだ。

ニーナは気づいた。

そうだ、これは幻覚、
それに、もう継母なんて怖くない。

ニーナはシーツを掴むと娘の腕を
もう片方の手で掴み、
無理やり自分のほうに向かせた。

そして、文句を言う間も与えず、
シーツを投げつけた。

「きゃ!」

娘はシーツともつれるようにして倒れた。
父と継母はニーナの突然の行動に
驚愕している。

ニーナはスパイモードをオンにした。

娘は立ち上がり、掴みかかってきた。

「何すんのよ!」

ニーナはそれをサッと避けた。
そして、側にあった花瓶を取り、
活けてある花ごと、中の水を娘にかけた。
娘はまた叫んだ。

「ママ!パパ!」

その声で父も継母もついに動いた。
父はニーナを押し退け、
畳んであったタオルを取り、娘を包んだ。

継母はニーナを突き飛ばし、
盛大に怒鳴りつけた。

「あたしの大事な娘になんてことを!」

しかし、もうニーナは怯まなかった。
挑むように、三人をじっと見つめる。