Pacifism Spy

「さてと、いくぜぇ。」

豪雨はベルトから爆弾を一つ外し、
かっこよく決めようとした。

「戦闘主義スパイ、豪・・・。」

サンゴは構わず、なんと丸腰で
スタスタと豪雨に近づいてきた。

うっとたじろぐ豪雨との距離を
五十センチまで縮めると、
上目遣いでじっと見つめる。

(かわいい・・・。)

豪雨は思わず油断した。
サンゴの顔は、
どっちかと言うと可愛い方だ。

サンゴは更に何も言わず、
目に涙を一杯に溜めた。

「な、な・・・。」

豪雨は焦った。
敵であるの百も承知だ。
しかし、サンゴに見とれていた。

サンゴは、

(コイツ、馬鹿?)

と思ったが、動きが止まったのは
ありがたい。


「あの・・・私・・・。」

サンゴは声を震わせ
そこまで言うと・・・


ーバキッ!-

「・・・っ!」


豪雨にアッパーカットを打ち込んだ。

そして呻きながらヨロヨロしている
豪雨をよそに、吹っ飛んだドアを拾い、
ガタガタと付け直すと、中に入り、
鍵まで掛けてしまった。


「な?おいコラ!開けろ!」

豪雨はドアに体当たりをしてきた。

サンゴは気にせず髪を
ポニーテールに縛り、
豪雨が体当たりのため、身体を引き、
突進するのと同時に再びドアを
蹴り破った。