Pacifism Spy

ナナは飛んでくるナイフを避けつつ
間合いをつめ、自分の周りのナイフを
全て切った。

これで飛んでいったナイフは
戻ってはこない。

ナナは小雨の肩を浅く切ろうとした。
しかし、


ーキィン!-


小雨は、あらかじめ手に持って
戦うのに丁度良いナイフを
投げずに持っていたのだ。

対して、ナナのナイフは、
大きさは丁度良いものの、
やや重めの作りだったのだ。

(分が悪いな)

ナナはそう思ったが、
スパイとしてのプライドが
逃げることを許さなかった。

小雨はそんなナナを
嘲るように笑うと、

「そのナイフ、もろいんだよ。」

と言うや否や
自分の持っているナイフを振り上げた。


ナナは自分のナイフで、
(といっても奪ったものだが)
防ごうとした。

小雨は容赦なくナイフを振り下ろした。
すると、なんとナナのナイフは、
スパッとあっけなく切られてしまった。

「マジで?」

「終わりね。」


小雨は最後とばかりに
ナナにナイフを突き立てようとした。

しかし、

「・・・!」

小雨は急に立ち止まった。

ナナは訝りながらも
すこし後退した。


次の瞬間、

「お兄ちゃん・・・!」

小雨はそういうと、
棒立ちのナナの横を素通りし、
走り去ってしまった。

ナナは一瞬呆けたが、
慌てて後を追った。