レイナは、いつまでたっても
最後の一撃を加えられないのを
変に思い、目を開いてみた。

すると、自分を囲んでいた糸は、
全て落ちている。

そして春雨はレイナの
更に後方を睨みつけている。
レイナはつられて後ろを向いた。


「サヤ?」

「ずいぶんなやられようねえ。
 リーダーのお気に入りの癖に。」

相変わらずいやみな口調だ。

その手にはびょうが飛び出た鎖がある。
鎖は蜘蛛の巣のような糸の隙間を
上手くくぐり、春雨に傷を
負わせたのだろう。

普通はイチゴのように
あからさまに危ないものは
持たないのだろうが、
今回は別なのだろう。


「また、邪魔者が来たわね。」

「邪魔したくなる性質なのよ。」

春雨はまたしても糸を操り、
レイナとサヤを囲んだが、サヤの鎖で
あっけなく切られてしまった。


サヤはレイナに一言、

「こっちよ。」

といい走り出した。



「サヤっ!この道知ってるの?」

「知らなきゃこんなことしないわ!
 あたしの部屋とエレベーターの
 近道よ!」


春雨は今度は糸を
張り巡らしたりせずに追ってきた。

サヤは走りながら
カードキーを取り出した。

これは、スパイの一員であることを
示すもので、全員
肌身離さず持っている。でないと、
忠誠心がないと見なされるし、
建物や自室に入る際には
このカードキーがひつようだからだ。