ナナは目が覚めた。
後頭部がズキズキする。
立ち上がればふらふらする。

良くない事が起こったのは
明白だった。

「リーダー・・・。」

ナナはリーダーに伝えるべく
必死に歩き出した。



エレベーターの前につく頃には
ナナは頭がはっきりしてきた。

しかし、エレベーターの前には
見慣れない人物がいた。

ナナを含めスパイ全員が
仲間の顔と名前は記憶している。
つまり、部外者ということだ。

(一体・・・?)

ナナは身を潜め見慣れない人物が
いなくなるのを待った。
しかし、その人物は
動く気配さえない。

(こっちは急いでるのに・・・。)

ナナは仕方なく階段を
使うことにした。



一番下の階には、
大切なものを保管する保管庫と
レイの部屋しかない。

ナナはスパイモードをオンにした。
どっちにしろレイに報告するときは
こうしなければならないし、
用心するにこしたことはない。

「ったく、どうして私が
 どつかされなきゃならないのよ。
 サイアクッ!」

一息おき、

「しかもエレベーター使えないし、
 なんなのよあの人!」

階段は螺旋状になっている。
そして、ナナのいた階と
一番下の階は軽く三十階以上
離れている。

ナナは目が回ってきた。
そして、一段踏み外した。

ガクッという感覚、
続いて体中に走る痛み、
しかもなかなか止まらない。

手放しそうになる意識をかろうじて
保ち・・・やっと止まった。

「いったーい・・。」

二、三階分の階段を滑り落ちた
ナナは、手すりにしっかりつかまり、
また降りていった。



十分後、ナナはレイの階まで
あと十二階というところで
ふと思った。

ナナは居住区域に
見知らぬ人間がいたから階段を使った。
どの階も階段とエレベーターは
一枚の壁で隔たれている。
ナナはその階でそっと
エレベーターのほうを見てみた。

(・・・誰もいない・・・。)

ナナは脱力した。
もっと早く気づいていれば
階段から滑り落ちることも
なかったかも知れない。

ナナはエレベーターを使い、
ようやくレイの部屋へついた。