「あ、危ういところだったわ・・・」

レイナは辺りを見回しながら呟いた。
誰もいない。

レイナは巻き込みたくなかったため、
一人でエレベーターを探した。

ここの階は居住区域になっている。
レイの部屋だけは一人せいもあり
別の階なのだが・・・。

ここの階は道がごちゃごちゃに
入り組んでいる。
どんなに記憶力の良い人でも、
ここの道全てを記憶するのは不可能だ。

というわけで一人ひとり
自室から中央のある
エレベーターまでの道を覚えておく。
別室の友人に会いに行く人は
その道も覚えておく。

レイナが出た所は、
レイナの記憶にはないところだった。


(リーダーに知らせないと。)

レイナは無線を使った。
しかし、ノイズばかりだ。


「どうして?」

そのとき、足元に何かが引っかかった。

「・・・?」

レイナは足元に視線を向けた。

「・・・糸・・・?」

床すれすれのところに糸があった。
しかも落ちているのではなく、
廊下をずっと辿っていた。


「まさか・・・っ!」

レイナは走りだした。
糸は二つの分かれ道にも
ちゃんと走っていた。

「やっぱり・・・。」

レイナはただ走り続けた。
迷ったときはこうするのが一番だ。
そして、ついにエレベーターを
見つけた。その前には・・・


「・・・!春雨・・・!」

「遅いわよ。」

春雨はそう言うと同時に
指をくいっと動かした。
すると、レイナの上下左右にまで
蜘蛛の巣のような糸がかこんだ。

「今度は逃がさない。」

レイナは覚悟し、そのときを待った。