「ナナ・・・。
 今すぐやめなさい!
 帰ってきなさい!」

「無理よ!言ったでしょ!
 敵が来るかもしれない!
 しばらく出ちゃいけないの!」

「その前に出なさい!
 ナナ一人いなくても平気でしょ!
 三百人もいるんでしょ!」

そして終いには泣きそうな声で、

「お願いよ・・・ナナ。」


こうされるとナナは困る。

しかし、もう心は決まっていた。
いままでこなした任務や、
一緒に働いてきた仲間の顔が
浮かんでくる。


「ママ・・・ごめんなさい。
 私、帰れない。今帰ったら私、
 一生後悔する。
 ここの仲間は私にとって
 パパやママと同じくらいに大切なの。
 リーダーが言ったからじゃない。

 私の意志なの。
 私、今までママのために生きてきた。
 ママ、パパと別居したとき
 言ったよね。
 『ママのために生きて』って。
 私その通りにしてきた。
 ママの要望には答えたよ。
 今度はママの番。

 私が、ここに、残ること。
 許して。」


ナナは、母の答を待つことなく
電話を切った。

この騒ぎが静まったら、
ちゃんと顔を見て謝ろう
と思いながら。

その直後、
トントンと背中を叩かれた。

ナナは位置的にニーナかサンナかと
思い、振り返った。

ー誰も居ないー

(気の・・・せい?)

ートントンー

(・・・じゃない!)

ナナは固まったように動けなかった。
あの二人は気配を消すことは上手いが、
こんな悪ふざけはしない。

「誰?出てきてよ!」

そのとき、後頭部に激痛が走った。

「・・・っ!」


意識が急に薄れていく。
ナナは何とか意識を保とうと頑張るが、
だんだん暗くなってきた。

すると、目の前に人が現れた。

「しょーがねーな。
 こいつは小雨のモンだ。」

(小・・・雨?)

ナナはそこで気を失った。