Pacifism Spy

豪雨は、成績はいつもオール五で、
器用で気の利く良い子だと
近所でも評判だった。

その器用さを生かし、
豪雨は木の置物をいくつか作った。

プロのようにきれいではないが、
まあまあの出来だ。

その後、よくしなる竹を見つけ、
何本も組み合わせて
五十㌢のかごを作った。

さらに、小さなナイフで、

『缶・ビン・ペットボトル』

と文字を彫り、捨ててあった
インクのペンを垂らし、
遠くからでもわかると確認し、
近くの道に置いてきた。

リサイクルできるものは、
市役所に持っていくと
換金してくれるのだ。

置物は、休日に豪雨が言葉巧みに
大人に買ってもらった。

一日一食の日もあったが、
豪雨はいつでも小雨には
自分よりたくさんの量を食べさせた。

冬の寒い日には、
自分の食費を削ってでも
ホッカイロなどを買ってやった。

風邪を引けば、万引きしてでも
栄養のあるものを食べさせた。

そのうち、小雨も少しずつ
豪雨の手伝いをしだした。

ほんの少し生活も楽になった。

長期休暇には、
かごにはたくさんの
空き缶などが溜まった。


そんなある日、豪雨は
ある思いに至った。


ー世界中の子どもは
 親に愛されるべきだ。-


豪雨は自分と大切な妹を
こんな場所に捨てた親を憎んだ。
罰を下すべきだと思った。

小雨は、そんな豪雨を引き止めている
唯一の存在だった。

しかし、ある日小雨は
ナイフを見ながら、
ポツリと呟いた。

ーこれで、パパとママを殺せる?-

ーああ、殺せるぜー