小雨と豪雨は、
八歳違いで兄弟としては
年が離れている。

豪雨が十二歳、小雨が四歳のとき、
雨の中両親に捨てられた。

年齢より勘が鋭かった豪雨は、

「ここで待ってろ」

と言われた所で
二日も三日も待つようなことは
しなかった。

四歳で何も分からない小雨のために
いろいろ働いた。

二人が捨てられた場所は町のはずれで、
粗大ゴミなどの放置場所になっていた。
ガス欠の車や、
まだ使えるはずの洋服や毛布もあった。

豪雨は落ちていたハンマーで
車の窓ガラスを叩き割り、
破片をできるだけ取り出すと、
小雨を中に入れた。
雨にぬれて風邪でもひいたら一大事だ。

豪雨も中に入り、
今の状況を小雨に話して聞かせた。

小雨は、いじわるな両親が嫌い
ということもあって、
すんなりと受け入れた。


豪雨は、この後衣食住を
どうするか考えた。

衣は問題なかった。
そこらじゅうに
まだ使える洋服があった。
汚いし、匂いもするが贅沢はいえない。
それに、雨水が溜まっているところで
洗って使えばまだまだ着れたからだ。

住も大丈夫だった。
車の中だ。
エアコンもないが、横になって
眠るには十分だった。

問題は食だ。
豪雨は家を出る時スナック菓子を
二袋持ってきていた。
カバーつきのナイフも
数本くすねていた。

豪雨はその中でも一番軽くて
使いやすいものを護身用として
小雨に持たせた。

豪雨は、スナック菓子二つでは、
三日ももたないとわかっていた。