小雨は、自分のナイフを
全身のありとあらゆるところに隠し、
鏡の前でジャンプしたり、
急にしゃがんだりして、
ナイフが見えないかどうか確かめた。

そして、完璧とわかると
ナイフを置き、欠伸をした。
そして、部屋の隅で座り込んでいる
豪雨の目の前まで来た。
そしてふてくされたように
豪雨の顔を覗き込んだ。

豪雨は機嫌が悪そうに見返す。
今にも手を出しそうだ。

しかし、約五秒後、

「・・・分かったよ。
 さっきは悪かったな。」

「えへへ。」

豪雨は小雨に笑いかけ、
小雨も小さく笑う。

この二人は兄弟だ。

普段の豪雨はかなりのシスコン
(シスターコンプレックス)で、
小雨の言うことを何でも聞くし、
小雨がやる気になればなんでも手伝う。

そして小雨を目の前で傷つける者が
いれば、一人の例外もなく
爆弾を投げつける。

さっきというのは
全員で話していた時のことだ。

小雨は、豪雨に

『その調子だぜ。』

と言って欲しかったのだ。