秋雨は春雨をじっと見た。

「なぁ、春雨。」

「・・・・・・。」

「俺さぁ・・・。」

「・・・・・・。」

「本気で好きなんだよ?」

「・・・・・・。」


いつもはここで諦める
秋雨だったが、今日は違った。


「今回の任務で、
 俺は死ぬかもしんねぇ。」

「・・・っ。」

春雨がかすかに反応する。

「お前も同じだろ?」

「あたしは死なない。」

「断言できんの?」

「それは・・・。」


春雨も平和主義スパイの
手ごわさは知っている。


「あのさ、あいつらは
 俺らを生け捕りにしようと
 するはずだ。」

「死んだ方がマシよ。」

「そう言わずにさ。
 俺と勝負しねえか?」

「どういうこと?」

「明日、どっちかがあいつらに
 捕まえられなかったら、
 そいつの勝ち。
 勝ったほうは捕まったほうを助ける。
 そして、負けた方は勝ったほうの
 言うことを一つだけ聞かなくちゃ
 いけねえ。どうだ?」

「いいわよ。」

「じゅあ、今のうちに決めとこうぜ。」

「私が勝ったら、もうあたしに
 ちょっかい出さないで。」

「う・・・わかったよ。
 でも、俺が勝ったら、
 付き合ってもらうからな。」


秋雨はそういうと
さっさと寝てしまった。
絶対に勝つと誓いながら・・・。

春雨はしばらく糸の調整をし、
それからベッドへ向かった。

普段は変わらない口元に
微かな笑みを浮かべながら・・・。