Pacifism Spy

春雨は戦闘主義スパイの
一番の新顔だ。
しかし、殺した数は一番多い。

というのも、
春雨の元の仕事が、
死刑決行人と殺し屋だったからだ。

春雨の育った国は、
月に少なくとも二、三人が
死刑に処されていた。

治安も悪く、国全体でいつも
憎しみや悪意が渦まいてる状態だった。

そんな中、春雨は曲弦師として
身を守っていた。

曲弦師とは、
細い糸から太いロープまでのものを
器用に操りありとあらゆる事を
する人のことを言う。

春雨はいつも何メートルもある
糸を持ち歩き、
絡んでくる奴には糸を巻きつけ、
引き下がらない場合には
糸を血に染めたし、
お金が必要な時には、
少しでも裕福な家庭に行き、
薪割りや草刈をして、
お金をもらった。

そんなある日、春雨は殺し屋に入った。
ちゃんと働きさえすれば
衣食住は確保される。

物音一つ立てずに
斬りたい物だけを斬る春雨の能力は
重宝された。

そして、表の仕事として任されたのが
死刑決行人だった。

そうして春雨は生きていた。

いつも人を殺すことに身を尽くしてきた
春雨は、恋愛などというものに
興味はなかった。

そんな日、霜降が春雨の元に来た。


ー私についてくれば
　もっといい暮らしが出来る。－


その一言で春雨は霜降に
ついてきたのだった。