Pacifism Spy

そのころ、
別のとある町のはずれに建つ
立派な屋敷。

しかし、広い庭には
ススキや雑草がすき放題に伸び、
屋敷の外の壁には蔦が覆うように
絡んでいる。

外見はろくに整っていない
この屋敷の中の食堂に
十人の人間が座っていた。

一人ひとりの目の前には料理があった。
しかし、ほとんどの人が食べていない。

シャンデリアが時折点滅する。

その中の一人が軽く咳をした。
他の九人がそちらを向く。


「時は来た。」

そういったのは霜降という男。
眼帯をしていて、もう片方の目には
二本の傷跡がある。


「明日・・・だったな。」

そういうのは時雨という少年。
まだあどけない表情が残る十三歳だ。
背には釘バットがある。


「クククク。さっさと始めてぇ。」

眼光を光らせ不敵に笑い、
そう言ったのは十五歳の霧雨。
特殊な体質でなんと霧になれる。


「焦りは失敗の元。
 ゆっくりと確実に。」

なんの感情もこもらない声で
そういったのは春雨という
十五歳の少女。
目はガラス玉のようで無表情だ。
主にピアノ線を使う曲弦師。


「進め方も作戦も私の分野よ。
 口出しはさせないわ。」

冷めた目で全員を睨みつけ
きっぱりとそう言ったのは策士の霙だ。


「分かってるって。けど、
 百パーセント成功の頼むぜ?」

そう言い、ベルトのホルダーから
ペットボトルをはずし、水を飲んだ。
体術使いの秋雨だ。


「古傷が疼く。」

そう言ってベルトのナイフをチラッと
見たのは小雨だ。
同時に左肩を抑える。
昔、ナナにやられたのだ。


「ケッ!どいつもこいつも
 早まんじゃねえよ!」

爆薬を調合しながら吐きすてるように
言ったのは豪雨だ。


「ニーナと。」

「サンナは。」

「「渡さない。」」

そういったのは春夏と秋冬。双子だ。

春夏は幻術で相手を惑わせたり、
精神崩壊を引き起こす。

秋冬は背丈と同等の刀で相手を
薙ぎ倒す。