Pacifism Spy

「急の召集によく集まってくれた。」

レイはこう切り出し、
一息ついてまた話し出した。

「もうほとんどの者が知って
 いるだろうが、我らの組織に
 戦闘主義スパイが進入を試みている、
 という情報が入った。」

すると、水面に波紋が広がるように
ざわめきが広がった。

ニーナのようにスパイモードが
静かな人やサンナのように
「躾」られている人は
レイの言葉を待ったが、
ざわめきはなかなか引かず、
時折、『戦闘』だとか『戦う』
だとかいう声も聞こえた。

やっとそれがおさまると
レイは全員を見回し、こう言った。

「これからしばらくこの建物からの
 外出を禁止する。
 この中に入ろうとするものは誰で
 あろうとそれを許してはならない。」

そして、レイは新しい決まりを
いくつか作った。
そのなかで特に大事なのが
この四つだった。



一、どんなに小さくとも外と通じる
  通路や穴はすべて封じる。
  巨大換気扇は三~四人で見張り、
  動かすこと。

二、一日一回、名簿に
  チェックを付けること。
  なお、他人に頼んではいけない。
  必ず自分でつけること。

三、単独行動は禁止する。
  必ず2人以上で行動すること。

四、外部と連絡する時は、
  組織内の無線、もしくは
  組織内の電話を使うこと。




「以上だ。この決まりを
 三回以上破ることは許さない。」

「リーダー。」

ここでナナが手を挙げた。

「どうした?」

「電話とかトイレとかそういうのも
 一人じゃダメなんですか?」

レイはフッと笑いこう言った。

「仕方ないな。そういう部類に
 相応しい時間内なら許そう。
 これで集会は終わりだ。」