レイナは十二歳まで
ひどい暮らしをしていた。

貧民街で育ち、
生きるためには窃盗も躊躇うことは
許されなかった。

捨てられた自分を育ててくれた
親代わりの人や、
一緒に支えあってる人のために、
一日三回以上は盗みや空き巣を
することもあった。

どうしても上手くいかないときは、
貧民街のとなりの町で、体を売った。
一回でかなりの大金が手に入った。
そしてそれは、レイナだから出来る
ことだった。
初めて体を売ったのは七歳の時だった。
その時点で将来美人になるだろうと
噂されるほどの容姿だった。

十歳になると、初めから町に出た。
相手はどうでもよかった。
外見も年齢も関係なかった。
その日をしのげるお金さえ
手に入れば誰でもよかった。

十一歳のある日、レイナが町に
出ている日に、貧民街に火が放たれた。
レイナは炎の中に飛び込んで、
家族のように暮らしていた人たちを
助けたかった。
でなければ一緒に焼け死んでもいい
と思い、すぐに貧民街へ行った。

しかし、情けないことに、
凄まじい炎や熱風に、体が心に反して
一歩も進んでくれなかった。
かといって背を向けて去ることも
出来なかった。

心のどこかで、誰かが炎を逃れて来る
と思っていた。
しかし、その思いが
現実になることはなかった。