歩きながら、サンゴは
二ヶ月前のことを思い出していた。

学年全体でとある高原に来ていた。
いわゆる遠足のようなものだ。
皆でお弁当を食べ、小学生のように
レクレーションをしていた。

しかし、一部、交じらないで
絵を描いたりしている人もいた。
サンゴもその内の一人だった、
というより、いつもの性格から
誘われなかった。

サンゴは、一人で
ぶらぶらと歩いていた。
その途中、これまた一人でいる
人物を見かけた。
イチゴだ。

サンゴは、

(そういえば、イチゴも群れるのが
 苦手だったっけ。)

そう思いながら素通りしようとして、
ふと足を止めた。

イチゴは特に意識せず
座っているのだろうが、
それがよく似合っていた。
右足を伸ばし、左足を曲げている。
その左膝に両腕と顎を乗せている。

サンゴはしばらく魅入ってしまった。

ああ、自分はイチゴが好きなんだ
と理解した。

ーこのままイチゴが気づくまで
見ていよう、
そしたらイチゴは告白するきっかけを
作ってくれる。私が告白すると、
イチゴが『俺も。』って言うー

しかし、サンゴはイチゴが気づく前に
スタスタと立ち去った。
きっとまた機会があると思って。

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(なーんて。こんな女々しかったっけ?
 さっさと諦めよう)

(うわー。マジでありえねえよな。)

二人は全く同じようなことを感じ、
想いあっているが、
通じ合うことはないようだった。