Pacifism Spy

そこでイチゴは土手に足を伸ばして
座っているサンゴを見つけた。

話しかけようとして、
ふと思いとどまった。

時刻は五時半。
川も、土手も、川原も
あたり一面が夕日でオレンジ色に
染まっている。

サンゴはそんな中、
赤い髪のせいか溶け込みそうだった。
しかし、それでいて目立っていたし、
よく映えていた。

黒い目は、まっすぐと前を見ている。
いつもと同じ、迷いのない目だ。

そよ風が吹くと、
絹のような髪がサラサラと流れる。

「・・・・・・。」

イチゴは魅入ってしまった。
綺麗だと、ただ単純にそう思った。

が、次の瞬間、
サンゴと目が合った。

「イチゴ?」

サンゴは訝しげに聞いた。
いつもなら怒鳴ってくるのに。

イチゴははっとして、
あわてて言い繕った。

「リ、リーダーが呼んでるだろーが。」

「そうだったね。行こうか。」