Pacifism Spy

サンゴがすかさずその手を持って
引き上げようとしたが、
男子高校生+男子中学生の重さを、
女子高生が片手一本で引き上げるのは
無理だった。

スパイモードオンでも無理だ。
ところが、サンゴは今にも落ちそうな
イチゴが辛うじて掴んでいる時雨を見て
はっとした。小刻みに揺れているせいか、
時雨の口元がつり上がって見えた。

(イチゴを巻き添えにする気?)

サンゴのなかで一気に怒りが湧き上がった。
サンゴはもののニ、三秒でイチゴと時雨を
引っ張りあげた。

時雨はぐったりしたままだ。
サンゴが何か言う前にまた大きな揺れが来た。

「ありがとなサンゴ。行こう!」

「・・・ん。」