Pacifism Spy

 サンナの両親もスパイだった。
「だった」
というのは、二人ともサンナが六歳のときに
戦闘等主義スパイに殺されたからだ。

それも、今まで何度かあった小さな衝突の
なかの一つで運悪くだった。
おまけに母親はサンナを庇ったせいで
死んだといっても過言ではないのだった。

しかし、サンナは
自分の弱さを責めたことはあっても、
戦闘主義スパイを恨んだり、
憎んだりしたことはない。
恨みは憎しみは、破壊と殺意しか
生み出さないからだ。

ただ、サンナだって一人の人間だ。
恨んだり憎んだりするのは
意図的に抑えていた。

そのため、サンナはいつか
戦闘主義スパイと衝突する日を
恐れていた。

自分たちは平和主義とはいえ、
スパイであることに変わりはない。
いくら平和を願っていても
そのために戦うことだってありえることだ。

そのため、
一般的な戦いの知識は身に着けている。
サンナは戦闘主義スパイと衝突したとき、
自分が自分でなくなる気がした。

今もっている戦闘の全知識と
全技術をもって本能に乗っ取られ、
その身が滅びるまで
戦闘主義スパイに戦いを
挑んでしまう気がするのだ。


サンナは百八十度向きを変え、
走り出した。