その時、目の前でふわりと小さな風が起きたかと思うと、羽渕依と名乗った彼があたしの肩に手を置いた。
「ほら、玲央。謝るんだ」
「……ちっ」
舌打ちしつつ、そっぽむきつつ。
そんな態度のまま、金髪男こと、玲央はあたしの前にやって来て、おもむろに頭を下げた。
……えっ、何!?
「その……さっきは悪かったよ。お前の事情も知らずに文句言って……」
ぼそぼそとつぶやかれた声は、小さすぎてところどころ聞き取りにくかったが、最後までちゃんと耳を澄ませば聞くことができた。
「ごめんね望月さん。玲央が君の事情も知らずに大口叩いたみたいで……」
眼鏡をかけた男性が、ポンッとあたしの頭に大きな手の平を乗せる。
まるで父親のように、あたしの存在を慈しむように。
なぜだかそれがあたしにはとても嬉しくて……温かくて。
安堵してしまったせいか、思いっきり涙がポロポロと溢れ出てきた。



