あっ。



そう言えば、さっき学園長、部屋を出るときにあたしに何か言おうとしてたよね。


あれはもしかしたら、この人のことだったのかもしれない。


よくよく見れば、彼もあたしと同じ制服を着ているじゃないか。



「で、お前の弟は? さっきから見当たらないけど」


「……え?」



そう言えば、真守がまだ帰ってきてない。



チラリと時計を見てみると、もう既に時計の針は5時を過ぎようとしていた。



とっくに帰ってきてもいい時間なのに……。



「どうしたんだろう。幼稚園から帰ってくるだけなのに、どこかで迷子になったのかな……?」



今朝、幼稚園に送ったときにワケあり荘の前を通ったから、帰る場所はここだって教えたのにな……。


でも、新しい土地には変わりない。


小さな子供なら、土地勘がなくても無理はないだろう。



「ごめん、あたし探しに行ってくる!」



バンッと机をたたいて勢い良く立ち上がり、玄関に向かったとき。



――ガチャ。



ちょうど、その玄関の扉が開き、弟の真守の姿が現れた。



「おねぇちゃ……っ」



「真守!おかえ……り……」