そんなあたしが通うここは、桜ヶ丘学園。


このあたりでは有名な進学校だと思う。



現在、学園長からの呼び出しを受けてあたしは、学園長室に向かっていた。



無駄に長い校内の廊下を歩いていると、ようやく他の教室とは格段に質が違う大きなドアが目に入ってくる。



あたしはそのドアの前に立ち止まると、躊躇いがちにノックをした。



すると中からおだやかな声で、「どうぞ」なんて言葉が聞こえてくる。



扉を開けば、そこにはあたしを救ってくれた、年相応に髭を生やした、おおらかな学園長が、いつもと変わらぬ笑みであたしを待っていた。



「いらっしゃい、メグちゃん」


「学園長。学校ではせめて、望月と呼んでください 」


「まぁまぁ、いいじゃないか」


穏やかな笑顔を崩すことなく、フォッフォッと笑う学園長。


学園長は、なぜかあたしのことを親しみを込めたように〝メグちゃん〟と、下の名前で呼ぶ。