「彼氏?」

「えっ!?」

「表情コロコロ変わりすぎ」


わたしにしか聞こえないくらいの声で
話しかけてきた無表情のこの人

ほんとに表情変わらないなーこの人

あれ?
有村も心ひらいてる人の前でしか表情変えないってひろ言ってたよね?

今この人"表情変わりすぎ"って。

動揺してるからついついでちゃったんだ…


「えっと、もう支えてくれなくて大丈夫です」

「質問に答えてくれたら離すよ」


うわー…
すごく嘘くさい笑顔ですね

ほんと苦手です。


「友達です」

「ふーん。相手はそう思ってないと思うけどな~」

「……」


それってひろは友達と思ってないってこと?

ひろは幼馴染みだから仕方なくわたしの側にいたってこと?

でも、こんなわたしに友達なんかできたのがおかしいよね。

同情?かわいそうだから仕方なく?

陽は?

ああ。簡単なことだ

陽みたいなキラキラしてる人が本当に親友だと思ってるわけないじゃん


「あーごめん。泣かすつもりで言ったんじゃないから」

「…え…?」


わたし泣いてる?

頬を触ってみるとぬれていて


「なっ!おっさんなにゆき泣かしてんだよ!!」

「ゆき!?」

「きみらうるさいね。学校行かなくていいの?」

「ゆきのほうが大事だ」


それは幼馴染みだから仕方なくでしょう?


「いいです。先に行っててください。」

「は?」

「なに言ってるの?」


有村冷めました。
今、この二人といたくないです。


「じゃあ俺とデートしようか」

「ふざけんな」

「わっ」


ひろに腕を引かれてやっと解放された。

けど、この状況は…?


なぜかひろに抱きしめられてる

同情でここまでできるんですね。人間って


「こっち見ろ」

「なんですか?」

「なんで俺の前で無表情なんだよ」

「いつもと変わらないですよ」

「ゆ、き…?」

「なんでしょうか桜さん」

「どうして…」

「瀬間くん離してくれませんか?」

「…」


そう言うと離してくれたひろ

ふたりともすみませんでした。
有村バカで気づきませんでした

お二人が仕方なく有村を構ってくれていたことに

この無表情の方に気づかされました。

やっぱり有村は一人がいいです。


「おっさんゆきに何言ったんだよ」

「ん~べつに?」

「ひろは有村がいなくなれば嬉しいですよね?」

「は?」

「陽も」

「なに言ってるの…」

「さっき言われました。
ひろのことを彼氏?って
だから私は友達です。って言ったんです。そしたら、相手はそう思ってないって

それで気づきました。

有村に友達なんてできるわけなかった。

同情して仕方なく構ってくれていたことに


「「…」」


ふたりとも黙ってる。
正解だからなにも言えないんだろうね


「だから有村は二人から離れます。
気づくのが遅くてすみませんでした

いままでありがとうございました。
二人と一緒にいれて…楽しめたと…

いえ、すごく楽しかった!

だから有村はもう一人でも大丈夫です…」