疲れた・・・。今日は週の初めなのに遅くまで残業をしてきた。

いつもの道を通ってプレシャスの前まで来ると、店内の灯りに吸い込まれるようにドアを開けて入っていった。

「いらっしゃいませ~。あっ!茉優さん遅かったですね」

私の姿を見た樹里ちゃんが笑顔を向けて寄ってきた。

「こんばんは。今まで残業だったんだ」

「大変ですね、お疲れ様です」

そんな会話をしながらカウンター席に歩いていくと、安藤さんがいつも通りに挨拶をかけてくれた。

「お帰りなさい、茉優さん」

「ただいまです」

軽く頭を下げて笑顔を向けると、安藤さんも微笑んでくれる。

ああ、これだけでも疲れが取れちゃうな~。

そう思いながらイスに座ると、樹里ちゃんがお冷とおしぼりを置いてくれた。

「ありがとう」

「今日は茉優さんが来るの遅いから、オーナー心配していましたよ」

「え?あ・・すいません」

樹里ちゃんの言葉に安藤さんの方へ視線を移すと苦笑を見せる。

そうだよね、今日はもう閉店前の時間になっちゃったものね。

周りを見渡せば、カウンターの真ん中の席に座っている男の人以外にもうお客さんはいない。

閉店準備で樹里ちゃんは奥を片付けに行った。

そしておしぼりで手を拭いている私に、安藤さんが聞いてきた。

「茉優さん、ご飯は食べました?」

「あ・・おにぎりは食べたので、コーヒー飲みたいです」

「はい」

「あと何か甘いものがいいかな。抹茶ロールあります?」

「ありますよ」

「お願いします」

いつも通りの会話をして安藤さんが準備を始めたので私はお冷を飲んでいると、横からやたら視線を感じた。

今唯一いるお客の男の人だ。