安藤さんに後ろ抱きされながら浴槽に浸かる。

それでも安藤さんの唇は離れない。

首筋から背中へと優しく滑り、時々甘い痛みを残す。

「見えるとこはダメですよ」

感じながらも注意すると、「今日は許してください」と耳元に甘い声でささやく。

「ダメです・・」

「ご褒美ということで」

「ご褒美?」

何のご褒美なのか分からず聞き返すと、身体を持ち上げられて向き合う形になる。

「誘惑された茉優さんを見ても、冷静に対処したご褒美です」

「誘惑?」

「そうですよ、後藤さんに誘惑されかけたが正しいですね」

「そんな・・・」

「嫉妬した僕がなんとか感情を抑えたご褒美をもらいます」

安藤さんやっぱり嫉妬したんだ・・。

何とも言えない気持ちになり、言葉が出なくなる。

「でもお客様ですからね。なんとか平静を保ちましたが、好意を持たれて仲良くなられるのは我慢ができませんでした」

そうだよね・・。私も他の人が安藤さんに好意を持って近づいて行かれたら嫉妬しちゃう。

「ごめんなさい」

シュンとして謝ると、頬を優しく撫でてくれた。

「大丈夫ですよ。こうして帰りに僕の所へ来てくれた。それだけで僕の機嫌は治ってしまうのですから」

「うん・・・。そう!あの、どうしてあのコーヒーを後藤さんに出したの?」

どうしても気になっていたことを聞いてみた。

あのコーヒーは誰にも出さないはずなのに、すごく不思議だった。

「ああ・・あれはそうですね、茉優さんを想いながらも潔く引いてくれた。人を想う気持ちは僕にも分かります。もし自分だったらあんな風にできないなって思って。あのコーヒーは特別な感謝の気持ちです」

「そうだったんですね。じゃあ・・あの、私のカップがいつもと違ったのは・・・」

「ちょっとした嫉妬心を表現しました」

そう茶目っ気のある顔を見せて言った安藤さんに『やっぱり』と思ってしまった。

愛情をハッキリ示す安藤さんが、特別な態度を見せるならまたあの青磁のカップで私に出したはず。

だけど通常のカップで出したのは、拗ねる気持ちがあったから。

何となくあの時私は感じてしまった。

正直に話してくれた安藤さんが愛しくなって、「ご褒美たくさんあげます」と言って今度は私から唇を重ねた。

だけどすぐに安藤さんにペースを持って行かれてしまい、私は息を吸うことさえ途切れ途切れになってしまう。

そしてご褒美だとばかりに安藤さんの唇は、首から胸へとまた甘い跡を付けていく。

甘美な音が浴室内に響き、お互いの欲を煽らせていった。