「お前って意外に純情なんだな」
「っ!」
ははっと笑ったものの、光輝はバカにしたように笑ったわけではなかった。
むしろ嬉しそうに見えて、拍子抜けする。
何でそんなに笑うのよ。
なかなか笑うのを止めない光輝に、どうしたらいいか分からなくなる。
そして、あたしは頬を膨らませてボソッと言った。
「……うるさいわね」
「はははっ」
「もうっ…!」
でも……なんか嫌いじゃない。
こんな雰囲気……嫌いじゃない、かも。
光輝が笑っているのを見てたら、自然とこっちも気持ちが軽くなってきて。
自分の腕に隠した口元を、あたしは緩ませるのを止めれなかった。
そんなあたしの一面を知っていたのは、きっと相合い傘だけ。
「あーなんかスッキリした。帰るか」
「調子いいんだから」
「ははっ、悪い悪い」
そう言って、差し出される手をあたしは握り返す。
さっきとは違って、なんだか躊躇いがなくなっていたことにあたしは気づいていなかった。