これって…相合い傘?
………そう、あたしが見つけたもの。
それは幼い子供が書いたようなピンクの小さな相合い傘だった。
かなり昔のものみたいで、字が薄くなっている。
書いてあった名前は……
―――――『こうき』と『しずく』。
その名前にはっと息を呑む。
そして同時に記憶が蘇ってきた。
「俺が幼稚園からピンクのチョーク盗んでさ…
雫がいる横でこれ書いたんだよ」
何も言わないあたしに光輝がポツリと呟く。
その横顔は優しさと嬉しさを帯びていた。
「そしたらお前恥ずかしがって逃げたよな。
まさか残ってるとは思わなかった」
「…っ……」
ははっと笑う光輝の横で、あたしは顔を赤く染める。
覚えてるんだよ、光輝が言うこと。
だからこそ、言いたいことが見つからない。
「もう忘れちゃ……」
「……覚えてるよ」
光輝が言う言葉を遮ったあたし。
そこで初めて光輝があたしに顔を向けてきた。
あの時の感情、はっきりと覚えている。

