さすがにあたしだって焦る。
もしそこら辺で売っているアイスクリームとかだったら、あたしも好意に甘えていたかもしれない。
でも今回は違う。
高校生が単純に出せるような金額ではないのだ。
「光輝、そんなわけには…」
「今日一日、俺の言うこと聞くって命令…
まさか忘れてないよな?」
「っ、」
ズルい……。
そんなことを言われたら何も言えなくなっちゃうじゃないか。
困り果てて黙り込んだあたしの前で、光輝は満足そうに微笑むとあたしの頭をぽんぽんと撫でてきた。
「遠慮すんなって。
買い物に付き合ってくれたお礼だから」
こう言われてしまっては仕方ない。
また借りを作ってしまった…。
いろんな面で申し訳なさが心に残るけれど、光輝が好意でしてくれていることだ。
ここはありがたく受け取っておこう。
「あ、ありがと……」
照れながらもお礼を言うと、光輝はふっと笑っただけで何も言わなかった。
そしてワンピースを受け取って、歩き出したあたし達。
商品ももちろんだけど、光輝の気持ちも嬉しかったというのは…ここだけの秘密だ。

