「どうした?」
耳元で聞こえた声に、体が跳ねる。
ぱっと横を見ると、さらに近くにある光輝の顔が見えて。
顔に一気に熱が上っていく。
ちっ、近すぎでしょ……!
そう思ってみるものの、光輝が見ているのはあたしじゃなくてショーウィンドウに飾られているワンピースだった。
その視線の先に気づいたあたしは、慌てて言葉を探す。
「なっ、何でもないから…!
ほらっ、行こ?」
「……欲しいの?」
「っ!」
嘘……あたしそんなに物欲しそうな顔してた?
分かりやすかったかな……。
でも……
「いや、いいとは思ったけど高くて……」
「……買ってやるよ」
「……え?」
あたしの耳に届いたあり得ない言葉に、あたしは光輝の顔を直視する。
買ってやるよ……?
そんなバカなっ!
「だっ、駄目だって!
あたしは大丈夫だからっ…」
「いーから」
そう言って、光輝はあたしの手首を掴んで店内に入ってしまった。
そのまま光輝のことをガン見している女の店員さんのところに行き、
「あのワンピース下さい」
なんと戸惑うことなくそう言ってしまったのだ。

