もしかして神山先輩のことを言っているのだろうか?
別に傷つきはしなかったけれど、少し無神経な光輝にあたしは口を尖らせる。
「あんたね~」
「おっ、着いた」
愚痴を言おうとしたら、上手く遮られた。
こいつ……わざとだな?
あたしがむすっとしているのに気づいてるくせに、光輝は楽しそうに腕を引く。
「はあ……」
ため息をついて光輝が立ち止まったお店を見上げると、あたしは少しだけ目を見開いた。
「え……化粧品店?」
「あぁ」
普通に返事をする光輝によからぬ考えが浮かぶ。
もしかして……化粧してるとか?
それだったら、ちょっと気持ちわ……
「ばーか、何考えてんだよ。
俺のじゃない、母さんのだよ」
「え……?」
きょとんとして首を傾げれば、あたしに説明するように光輝が口を開く。
「俺の母さん、数ヵ月に一回
日本まで来て化粧品買うんだ。
…で、ちょうど切れたらしいから
俺は頼まれただけ」
「……ふぅん」
「そこで雫に頼みがある」
……頼み?

