「結構可愛いじゃん」



そう言って笑った光輝の笑顔には、まったく悪意が含まれていなかった。


おっ、素直に褒めてくれた?


……結構っていうのがちょっと引っ掛かったけど。


『可愛い』と言ってもらえて、心から嬉しいと思った。


……なのに。


「……まあね」



あたしの口から出てきたのは正反対の言葉。


なんだかんだ素直になれないのだ。


「可愛くねぇな」


「うるさいなー」



苦笑いをしながら言う光輝に複雑さを覚える。


あたしは可愛くないもん。


性格は意地っ張りだし、そんなところからして顔も可愛くないのだ。


素直に笑う女の子の方が可愛いでしょ?


そういう意味であたしは可愛くない。


「今日一日は俺の言うこと聞けよ?」


「駄目なのは駄目だからね」



こう言っとかないと何されるか分かんないし!


なのに、


「さあ…どうだか」



光輝に上手くはぐらかされてしまって。


反論しようとしたら、手を恋人繋ぎされてしまったから何も言えなくなってしまった。


……ヤバい、ドキドキする。


手汗かいちゃうよ。


……なんて女の子らしくないことを考えつつ、あたし達のお出掛けは幕を開けた。