「……ふざけんな」
さっきよりも何倍も低い声が耳に届く。
その声に、ここにいる全員が息を呑む。
目の前に立ちはだかる背中は頼もしくて。
あの幼かったころピーピー泣いていたのが嘘のようだ。
しゃがんだ神山先輩が頬を押さえながら、ゆらりと立ち上がる。
そして、光輝のことを睨み付けた。
「なんだよ、お前」
「それはこっちの台詞。
お前……こいつが本当に
好きじゃなかったと思ってんの?」
え……?
光輝の言葉に溢れそうになっていた涙が引っ込む。
な、んで…光輝がそんなことを……?
よく分からない。
頭の中がぐちゃぐちゃして整理できない。
そんなあたしに構うわけはなく、光輝がしっかりとした声で神山先輩に続けて言う。
「お前が教室に来る度に嬉しそうな顔して…
お前が部活で遅くなるとか嘘ついても
何時までも待って……」
「っ、」
先輩が気まずそうに目を逸らす。
でも、そんなことはどうでもよかった。
あたしはいつもと違う、真面目な光輝から目を離すことができずに彼を見つめる。

