でも……
「無理」
「はあ?」
あたしの言葉は『無理』という単語で片付けられてしまった。
別に期待していたわけではない。
この目の前の男があっさりと解放してくれるようなやつなら、あたしもこんなに嫌うことはなかっただろう。
本当に人の苛立つポイントを刺激してくるやつだ。
どうせあたしのことも涼しい顔して見下ろしているんだろう。
そう思っていた。
でも……違った。
光輝はさっきとは打って変わって、無表情になっていたのだから。
さすがにあたしも不思議に思う。
さっきまでのあの楽しげな様子は、どこにいってしまったんだろう。
じっと観察していると、光輝の形のいい唇が動いた。
「さっきの男の正体を話すまで……
どいてやらない」
「さっきも言ったけど……
あんたに関係ないでしょ?」
なんでそんなに神山先輩の話題に食いついてくるんだろう。
本当に謎だ。
あたしと神山先輩との関係なんて、こいつにとって一番興味がなさそうなのに。
あたしの強気な態度が面白かったのか、光輝が無表情から一変して意地悪そうな笑顔になる。
唇を指でなぞられて、体がぴくっと跳ねた。
「生意気な口だな……塞ぐぞ?」
「そんな脅し、聞かないけど」
どうせまたからかっているに決まってる。
そう思えたのは一瞬だった。
「……!?」
光輝の香水の匂いがふっと鼻を掠めたと思ったら、あたしの唇には柔らかいものが触れていた。

