「お母さん!?」
半分怒りつつリビングのドアを開けたけれど、そこには誰もいなくて。
よく耳をすませば玄関の外から笑い声が聞こえてくるから、きっと隣の家の人と話でもしているんだろう。
どうしよう……
きっとリビングにいたら、下りてくるに決まってる。
そう思ったのもつかの間、2階のどこかの部屋のドアが開く音が聞こえてきた。
その直後に聞こえてくる規則正しい階段を下りてくる音に、冷や汗が背中を伝うのを感じる。
ヤバい……
接触だけは避けないとっ……!
咄嗟にそう判断し、あたしはお母さんの寝室に飛び込んだ。
さすがにここは入ってこれないはず。
暗闇に息を潜めてしゃがみ込めば、部屋の前で止まる影が見える。
ドキドキが最高潮に達した時、その影は諦めたかのようにリビングへと向かっていった。
安心している暇はない。
すぐに部屋に戻らなきゃっ……!
なるべく激しい音を立てないように部屋を出ると、あたしは階段を駆け上って部屋のドアを閉めた。
あいつが来るのは分かっているから、急いで制服から部屋着に着替える。
それにしても……
なんであいつがいるんだろう。
しかも、平然とあたしの部屋に居座っていたところを見ると、お母さんという関門はすでに通過しているように思われる。
とりあえず……
家でもあたしは休めないってわけね。
再び聞こえてきた階段を上る音に、ため息を漏らすことしかできない。

