「ただいま~」
リビングにいるであろうお母さんに声をかけて、そのまま自分の部屋のある2階に向かう。
今日はあたしの好きな歌手の新曲のPVが公開される日だから、楽しみだったんだよね。
うきうきしながら、洗面所に入って手洗いうがいをする。
近くにある洗濯機に靴下を投げ入れると、小走りで部屋に向かう。
そして、鼻歌を歌いながら部屋のドアを開けた。
ガチャ……
「………っ!?」
バタンッ!!
開けたはいいものの、一瞬にしてドアを閉める。
もしかしたら初めてかもしれない。
自分の部屋のドアを開けたことをこんなに後悔したのは。
いつもなら部屋に入って、ぐだぐだする時間がこの上なく幸せなことなのに、今日はそうもいかなそうだ。
「……とうとうあたしは重症か」
本当に小さな声で呟く。
あいつが家にいるわけないじゃない。
大丈夫?
そう自分に言い聞かせて、再び部屋のドアを開ける。
でも……
「……よぉ」
やっぱりあいつの姿は部屋の中にあって。
もちろん信じたくないあたしは、部屋のドアを慌てて閉めると一気に階段を駆け下りた。

