日もすっかり暮れてしまって、靴箱の前に座り込んでいるのは……このあたしだ。
先輩との約束時間の5時から20分。
待ってはいるものの、先輩はまだ姿を現さない。
一瞬帰ったんじゃないか?と思ったけれど、先輩の靴はまだ残っていたからこうして待っているというわけだ。
でも、もう校庭を見てもやっている部活はなく、校舎内も人影は見当たらない。
先輩はどこに行ってしまったんだろう?
不安が胸に広がるけれど、不意に廊下の奥から聞こえ始めた靴音に、あたしは反射的に顔を上げた。
「お待たせ…っ……」
走りながらやってきたその人物に、自分の顔が緩むのが分かる。
やっぱり先輩は来てくれた。
あたしのこと、置いていくはずなんてなかったんだ。
「お疲れさま」
「ありがと」
持っていたタオルを差し出すと、先輩が嬉しそうに使ってくれるからこっちまで嬉しくなる。
「洗って返すよ」
「いえ、大丈夫ですから」
「悪いな」
先輩から受け取ったタオルをそっと鞄にしまうと、そのまま差し出された手をぎゅっと握る。
幸せだと思った。
先輩と他愛のない話をして帰る通学路が好きだった。
あたしの家まで送ってくれる先輩のことが、あたしは好きだったんだ。
「じゃあ、また明日な」
「……気を付けて」
「おう、さんきゅ」
そう言って手を振りながら去っていった先輩の背中を見送ってから、あたしは自分の家に入った。

