あっ……!!
「愛子、行ってくるっ」
「おー行ってらっしゃい」
入り口に立っている人物を見た瞬間、あたしのイライラが一瞬で吹き飛んだ。
そのまま軽い足取りでその人物の方向に向かう。
「……雫」
「神山先輩っ」
あたしの大好きな人……つまり彼氏なんです。
神山先輩がスッとあたしに手を伸ばしてくる。
そして頭に触れると、優しく撫でてきた。
愛子とはまた別に嬉しい感情が芽生えてきて、あたしはほほを赤く染める。
幸せなんだ、先輩に頭を撫でられている時間は。
「雫は秀明って呼べって言ってんのに」
「慣れないんですよ」
―――――そう。
先輩には何度も名前で呼ぶように言われてはいるけれど……恥ずかしくて呼ぶことができないんだ。
敬語だってまだ慣れなくて、直すことができない。

