「……行かなきゃ」
今行かなきゃいけない。
次のチャンスがいつか分からないまま…この機会を逃すのは惜しい。
そう思っていた時、
「松原さーん、診察の時間でーす」
タイミングよく、看護師さんが入ってきた。
そしてあたしの姿を見るなり、驚いたように目を丸める。
「松原さ…」
「すみません!
ちょっと外に出てきてもいいですか?」
「え?でもまだ…」
「ごめんなさい!
今じゃなきゃダメなんです!」
「あっ、ちょっと松原さん!」
慌てて引き止めようとする看護師さんの腕をすり抜けて、あたしは廊下に飛び出した。
病院内を静かに…でも素早く駆け巡る。
事故の後遺症はなく、万全でないのはあたしの記憶だけだった。
ほぼ直感で病院からの道を進む。
頭は覚えていなくても足が覚えているみたい。
体が自然と動くから。
雨上がりの歩道橋を渡って狭い道に入る。
走りながら見上げると、雲の間から顔を覗かせている青空が眩しかった。

