4月だったカレンダーが5月になった。
あの懐かしさをくれた桜も散り果てて、青葉を繁らせている。
春のものとは違う爽やかな風が病室のカーテンを揺らした。
……結局あたしの記憶も戻らないまま。
あの日、目覚めた日から人生が始まったかのように……何も思い出せない。
だから何も楽しくなかったんだ。
異世界に来てしまったみたいで、何も分からない。
「はぁ……」
………あの日。
あたしのお見舞いに来てくれた人の顔を見ても、誰か分からなかった。
あたしの前に現れた同じくらいの男の子は……すごく驚いていて、その後にとても悲しい顔をした。
彼と入れ違いに入ってきた男の人と女の人は泣いていて。
あたしにはどうしたらいいか分からなかったんだ。
後で泣いていた二人は両親で、男の子はあたしの幼馴染みの秋山君ということを教えてもらったんだけど……。
やっぱり何も思い出せなかった。