ガチャ……
病院の屋上の扉を開けると、そこには誰もいなかった。
ぽかぽかと春の日差しが暖かい。
鞄を近くのベンチに置いてようやく携帯を見つけると、俺はそれを開いた。
「……!」
思わず眉をひそめたのは電話主が……父さんだったから。
本当にタイミングが悪い。
でもかけ直さなかったら機嫌を損ねるだろうから、俺は嫌々ながらもコールボタンを押した。
数秒待ったあと、
「………もしもし」
不機嫌そうな声が出る。
「あ、父さん」
「お前、さっさとこっちに戻…」
「俺、しばらく帰んないわ」
「何を言ってる!いい加減に…」
「俺の大切なやつが苦しんでんだよ」
屋上のフェンス越しに下で行き交っている人の波を目で追いながら、携帯を持ち直す。
もう父さんの言いなりにならない。
そう決めたから。
俺を導いてくれたのは…俺のために怒ってくれたあいつ。
俺の夢を応援してくれた…大切なあいつだ。

