ようやくボタンをはずし終えた俺は、そっと雫の胸に手を置いた。
……トクン………トクン……
心臓は動いてる。
そのことに安心している暇はないんだ。
救急車が来るまでに人工呼吸をしなければならない。
そっと雫の顎を持ち上げて、気道を確保する。
十数回心臓マッサージをすると、俺は人だかりの中にいることを気にせずに雫に口付けた。
間に合ってくれっ……!
空気を入れては心臓マッサージを繰り返す。
それを何度か続けていた時だった。
「……!」
雫が弱々しくも息を吹き返したのを感じる。
顔をあげると、ほんの少しだけ顔色がよくなった気がした。
それを確認したのと同時に、救急車のサイレンの音が聞こえてくる。
俺ができるのは……ここまでか。
雫の体が冷えないようにぎゅっと抱き締める。
そうこうしているうちに救急車が到着して、雫が乗せられたあと乗るように促されて俺も車内に入った。
目の前にいる雫の手を握りつつも頭がついていかない。
ただ一つ分かるのは……俺のせいだ、ということだけだった。

