「安心しろよ。

 雫のこと…そんなに嫌いじゃないから」



その言葉が嘘ではないのは分かった。


目から真剣さが伝わってきたから。


だからこそ……嬉しくて。


今まで胸にあった蟠(ワダカマ)りが消えていくのを感じる。


よかった……本当に。


光輝があたしのことを嫌いじゃない。


それだけでこんなにも心がすっきりするなんて、思ってもみなかった。


だけど……


「あー腹減った!」



まだ……


あたしには残っていることがある。


今、伝えたいことがあるんだ。


ここからがあたしの始まり。


同時にあたしにとって……素直になるための最後のチャンスだ。


すっと深呼吸をして光輝の背中を見据える。


そして……家のドアに手をかけ始めている光輝の後ろで、


「……待って!」



あたしはとうとう光輝に声をかけた。