「帰るか」
「……うん」
そこまではよかったんだ。
何もないと思って、光輝の隣に行く。
すると……
「えっ……」
ぐいっと腕を掴まれて、気づけば恋人繋ぎをされていた。
絡められた手にぎゅっと力を込められて、顔に熱が上がっていく。
「な、んで……」
かろうじて出てきたのは、動揺しているのがバレバレな言葉。
本当に小さい声だったから聞こえたかは自信がなかったけど、光輝の悪戯っぽい顔からして聞こえていたようだ。
「いいじゃん、今日くらい。
昔よくやってただろ?」
そう言って無邪気に笑う彼は、幼い頃から変わっていなくて。
そのことがなんだか嬉しくって、あたしまで微笑んでしまった。
引っ張られる感じが心地いい。
光輝が他愛のない話を始めたけれど、正直聞いている余裕なんてなかった。
だって、ここからがあたしの勝負なんだから……―――。

