はっきり言って、つまらないんだ。


何も期待していないと自分は思っていたけれど、本当は心のどこかでしていたのかもしれない。


今回のことは何も悪くない。


だけど、光輝を悩ませるあの電話がやっぱり憎かった。


「……よいしょ、っと」



朝ごはんにコーヒーを準備しようと思い、とマグカップに手を伸ばすあたし。


自分のを取り出して、光輝のマグカップに手を伸ばした時だった。


「あっ……」



棚から取り出した瞬間、手持ち部分だけが手に残り


……ゴトン


本体のカップが重々しい音を立てて、床に落下した。


「……!」



人の気配を感じてぱっと顔を上げると、そこには驚いたような顔をした光輝がいて。


光輝を見つめたまま少し固まっていると、あとから遅れてお母さんが入ってきた。


「あら!光輝君のじゃない!

 壊れちゃったのね」



残念そうに新聞紙にカップを包むと、お母さんはそのまま立ち去っていったけれど。


何か…すごく嫌な予感がしたんだ。