「光輝ー?」
リビングにいるお母さんに頼まれて、再び階段を上り始めたあたしは部屋に入ってもいないのに名前を呼ぶ。
そして、部屋のドアに手をかけて静かに開けた。
視界に映ったのは、机に向かって座っている彼の姿。
こっちから顔は見えないものの、彼が起きていることは確認できた。
「朝ごはんできたよ」
「ん……あぁ、今行く」
「……」
何か言いたいのに言葉が出てこなくて。
結局何も言えずに、もやもやした気持ちのままあたしは1階に戻った。
……最近、光輝はぼんやりすることが多くなった。
あたしが話しかけても反応が薄いし、他のクラスメイトならなおさらだ。
だから、みんな何かあったのかと心配して、あれだけ周りにいた女の子達も今はちらほらとしか見受けられない。
何があったんだろう。
あたしが唯一知っていることと言えば、あの日に電話がきた時から光輝の様子がおかしいということだけだ。
「……はあ」
自然と出てくるのはため息だけ。