「雫……」
「…っ……」
何…この感じ……。
光輝の声は静かな部屋でも小さく聞こえるくらいのものだったのに、あたしの心には妙にずっしりきた。
続きを聞きたくない。
この先を言ってほしくない。
そう思ったものの、嫌なことほど実現してしまうもので。
次に光輝が放った言葉に、あたしは何を言えばいいか分からなかった。
「俺もいつまでも迷惑かけらんねーし…
いつかは帰るかもな…残念だけど」
さっきまで安心してできていたのに…どうして?
どうしてこんなにも胸がざわめくのかな。
まるで光輝がいなくなってしまいそうで、本当に怖くなる。
「そっか…そうだよね……」
ようやく絞り出した声は、自分でもびっくりするほど弱々しかった。
でもそれに光輝は何も答えず、
「……俺、先に下行くから。
お前も早く来いよ」
少しだけあたしに微笑んで、部屋から出ていってしまった。
彼が出ていったドアを見つめたまま動けないあたし。
たった今部屋から出ていった光輝の悲しそうな微笑みが頭から離れてくれなかった。