「え。何も言ってねーじゃん」
ははっと笑う光輝を見て怒っていないことと、思ったよりもバカにしていなかったことが分かったけれど。
それから先、何を言ったらいいか思い付かなくなる。
ダメだ……。
うまく会話が繋げない。
その要因の一つとして、まさか実現するとは思わなかった相合い傘をしていることが挙げられるかもしれない。
予想以上に近い距離。
ちょっと手を伸ばせばすぐ届く距離に、胸がドキドキしているのは事実だ。
そして……
「……実現してるな」
どうやら光輝も同じことを思っていたらしい。
ほぼ同じタイミングだったのにはびっくりしたけれど、返事をしないのは変だと思ったから、
「……そうだね」
照れつつも、そっと呟く。
「……否定しねぇの?」
「だって事実じゃん」
「可愛くねぇな」
「そんなこと知ってますー」
「ははっ」
楽しそうに笑う彼の横、バレないようにちょっと笑ったのはあたしだけの秘密。
あたしだけに向けてくれる笑顔が嬉しくて。
帰るまでの道のりで、あたしはただ幸せを噛み締めていた。

